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【書評】『2030年の世界地図帳』| SDGsという世界の新ルール

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SDGs

という言葉を聞いたことがあるだろうか?

Sugge(スッゲー) Dekkai(デッカイ) Gorilla(ゴリラ)
の略である

現在、世界はスッゲーデッカイゴリラによって
支配されようとしている

この問題は、一国の努力では解決できそうにない
だからこそ、「世界で協力して立ち向かおう!」

ということで2015年に国連で採択された目標である

 

さて、一部の人は気づいているかもしれないが
今の説明には、ある致命的な欠陥がある

そう、それは「SDGsが何の略か」という点だ
(後半のそれっぽい部分は本当のことである)
残念ながら?当然ゴリラの話ではない

もちろん
Special dynamic galaxy の話でもない

そして極め付けの問題は、その説明として使った
スッゲーデッカイゴリラというのが
超絶つまらないことだ
1mmもセンスも感じない

しかもそのあとにspecialなんとかという
つまらなさの上塗りをする

本当に申し訳ない

Submarine Dogeza de Gomennasai



さて、ここまで凍つく寒さに耐え
読み続けていただいた方に心からの感謝を捧げ
本題に入っていこうと思う

 

こんな方におすすめ

SDGsという言葉に興味がある

世界の今とこれからについてデータを見ながら知りたい

落合さん視点の今の世界の構造についての分析を知りたい

 

SDGsとは?

冒頭のおふざけがすぎたので
ここで軽くSDGsというのは何かを紹介しておこう

SDGs(Sustainable Development Goals)とは
2015年に国連で採択された持続可能な世界を実現するための世界共通の目標のことで

貧困や飢餓、教育、環境、労働などについての17のゴールが定められた上で、それぞれについてより細かい具体的なターゲットが決められている
そのターゲットの総数は169に及ぶ

SDGsと似たような取り組みとしては
MDGsというものがあったが、ほとんどの目標が達成されずに終わった

その反省も踏まえて採択されたのがSDGsである

具体的な169のターゲットをもつ、ということに加えて

・対象国が先進国と開発途上国の両方(MDGsは開発途上国のみ)
・企業も運用・策定にかかわっている(MDGsは国連やNGOなどの公的機関のみ)

という特徴がある

 

そして、このSDGsの達成目標が2030年
本書のタイトルに「2030年」というのが使われているのはこれが理由の1つ

『2030年の世界地図帳』の概要

『2030年の世界地図帳』の概要

著者  :落合陽一
出版日 :2019.11.22
ページ数:351p
値段  :1500円(+税)
出版社 :SBクリエイティブ株式会社

著者はメディアアーティストであり、研究者であり、大学教授でもある落合陽一さん
『日本最高戦略』『デジタルネイチャー』など多数の著作をもつ

落合陽一さんというと
横文字多めで独特の表現などで注目されることもあるが
本書は難解な言葉はでてこない

 

また、本書の特徴として、図が多いという点がある
世界地図上に各種のデータを示したような図、がたくさんのっている
そのため本のサイズも普通の単行本よりやや大きいサイズ

電子書籍だと図が見にくくなるので
紙での購入がおすすめ

2019年に2番目に売れたビジネス書である『ファクトフルネス』が
今までの世界のデータを多く扱ってくれているので
合わせて読むとより世界のデータがわかるようになる

『2030年の世界地図帳』の3ポイント

世界の人口ピラミッドとGDP

第1章はテクノロジーや人口の話が紹介されているので
その一部を紹介させてもらう

※これから紹介するデータは全て『2030年の世界地図帳』が出典です
『2030年の世界地図帳』はIMFやPwCのデータを参考にしています

注目が2019年、2030年、2050年の人口ピラミッド

2019年の日本を見ると下(若年層の人数)がすぼまった
見事なつぼ型であることがわかる
壺型度合いでいうとヨーロッパもなかなかだ

そしてヨーロッパと日本は人口が減少していく

中国は一人っ子政策のこともあり結構いびつな形

北アメリカとオーストラリアは壺と釣り鐘の中間のような形だが(釣鐘型は出生率も死亡率も低く、下が太く上が細い)
2050年になってもその形があまり崩れず人口も増えていく予想となっている

東南アジアとインド、南アメリカは釣鐘型
働き盛りの人たちがこれからもどんどん増えていく

インドがすでにまあまあ釣鐘型なのは少し驚いた

そしてアフリカはきれいな富士山型
2019年から2050年の30年で10億人以上の人口増加が見込まれている

人口増加もあいまって
2019-2030年にかけてインド、ベトナム、バングラデシュといった国々がめきめき急成長を遂げる予想となっている

人口増加やGDPの未来はあくまで予想ではあるが
今後の傾向として、アフリカや東南アジアの動きというのの
重要性が大きくなっていくのは間違いない

一度このデータをみておく価値は大いにある

4つのデジタルイデオロギー

本書の中ではこれからのデジタル社会を支配するイデオロギーを4つに分類している

・アメリカン・デジタル
・チャイニーズ・デジタル
・ヨーロピアン・デジタル
・サードウェーブ・デジタル

アメリカンデジタルはご存知GAFAMに代表される、アメリカ西海岸の勢力
チャイニーズデジタルはBATHが牽引している

アメリカンデジタルとチャイニーズデジタルは多少の違いはあれど、全体的な動きとしては似ている

両者を対比しながら考察する
『GAFA × BATH』と言う本も面白い

 

特徴的なのがこのあとの2つだ

まずヨーロピアンデジタル
ヨーロピアンデジタルの特徴はブランド力

彼らはまったく違った道に活路を見出しました。それがヨーロッパの伝統と文化を背景にしたブランド力によるエンパワーメントです。スペック上には現れない価値を想像し、顧客の間に協力なエンゲージメントを生み出します。

ヨーロッパは中国やアメリカのように
「プラットフォームをつくり、大量の人にサービスを届ける」というやり方ではなく、高付加価値のものをつくっていった

そして今、次なる手を打とうとしている
それについては次の節でふれる

 

もうひとつがサードウェーブデジタル

これはインドやアフリカ諸国をさす
特徴は、前近代から近代を経ずに現代に到達することだ
民主主義や資本主義という近代的な社会制度が整備されないまま、インターネットが導入され、その上のテクノロジーが生まれる

2014年で携帯電話普及率は80%を超えている
固定電話の回線整備を経ずに、いきなり携帯電話となったのだ

アフリカはアメリカ、中国、ヨーロッパでは生まれないような技術革新が起きる可能性を十二分に秘めている

SDGsとヨーロピアンデジタル

単にデータの紹介をしたり
SDGsの内容紹介をするにとどまらないのがこの本の面白いところ

最後にSDGsとヨーロピアンデジタルの関係性に触れていく

まず現在の主要産業を
「情報の層」「工業の層」「資源の層」に分類する

情報の層は先に述べたようにアメリカのGAFAMと中国のBATHが牽引する
次の工業の層は、安い労働力と大きな人口で中国が牽引してきた
資源の層は中東やアフリカに支えられている

そして今それらに対して
「法と倫理の層」の支配者として
世の産業全体の方向性をコントロールしようというのが
ヨーロッパの戦い方だというのだ

ヨーロッパというは民主主義や基本的人権という
現代社会の重要な概念を生み出してきた

長い歴史と伝統、文化がある

その自分たちのポジションを生かして
世界の牽引役になっていこうというのだ

なるほど、興味深い!
そういう見方があったか

支配というとなんか怖い感じがするが
利益だけを追求する資本主義ではなく
そこに法と倫理にのっとった意識をもつことは何も悪いことではない

 

そして文化や伝統なら日本にもある

なんでもかんでも欧米化!
産業的には安く高品質なものを!

となってきた日本だが

・国内の人口は減っていく
・安さでは中国にかなわない
・プラットフォームでもアメリカにはかなわない

となると人口減少、伝統と文化
ここに共通点があるヨーロッパをもう一度見直す価値は大いにありそうだ

『2030年の世界地図帳』を知った上で2020年代を生きていく

・東南アジアとアフリカはこれからも人口がどんどん拡大しGDPも成長していく
・アメリカ、中国、ヨーロッパ、そしてアフリカインドのサードウェーブデジタルという構造
・法と倫理の層で新たなルールでのゲームを開始しようとするヨーロッパ

いままでの10年で世の中は大きく変わった
テクノロジーの進歩で世の中の変化スピードは日に日に加速していく

これから10年も全く何が起こるかはわからない
予想は外れることもあるだろう

ただ、予想は当たらなければ意味がないものではない
予想や仮説があるからこそ
当たった時も外れた時もそこから考えを深めることができる

これからの時代はどうなっていくのだろうか?ということを考えるための地図として、まだ読んでない方は一度手にとってみてはいかがでしょうか

 

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