小説

【小説】『太陽の子』灰谷健次郎

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ツイッターでフォロワーさんに紹介してもらった本
灰谷健次郎さんの『太陽の子』
2019年度のベスト本にはいる本

冒頭文

 オンブバッタが三匹も重なって飛んだので、ふうちゃんは大声をあげた。
「はやく来てえ!」
 おかあさんは、またかという顔をした。
「六年生にもなるのに、いつになったらおとなになるんだろうね。この子は七十歳になっても子どものまンまかもしれん。エライ子を生んでしもうたなァ、おとうさん」
 と話しかけた。

既に亡くなっている作家さんの本で
最近の本の探し方ではなかなか読むに
至らなかったであろう本
Twitterを始めたおかげで出会えた
とてもよかった本

心をえぐってくるというほどではないし
やさしくなでてくれるわけでもない

なにか鈍器のようなものでなぐられるようなかんじ
普段無意識に目を背けているもの
気付いていないことを気づかせてくれる
とても力強い小説

灰谷健次郎

児童文学作家で2006年に亡くなっている

そもそも児童文学というジャンルはあまり詳しく知らなかったが
江國香織さんや上橋菜穂子さんや
佐藤多佳子さん森絵都さん
このジャンルに属する作品を書いて
賞をもらっている

12歳以下の人が対象で
挿絵などが多いものなども含まれるそうだが

この
『太陽の子』

は全然そんなかんじではない
たしかに主人公は小学生で
読みやすく書かれてはいるが
内容は大人が読んでも強い衝撃を受ける

代表作としてはこの『太陽の子』のほかに
『兎の眼』がある

『太陽の子』がとてもよかったので
『兎の眼』もぜひ読んでみようと思う

太陽の子

あらすじはこちら

ふうちゃんは、神戸生まれの女の子。おとうさんとおかあさんは沖縄出身で、神戸の下町で琉球料理の店「てだのふあ・おきなわ亭」を営んでいる。やさしい常連さんたちに囲まれて明るく育ったふうちゃんだが、六年生になった頃、おとうさんが心の病気で苦しむようになる。おとうさんの病気の原因は何なのか?ふうちゃんは、「沖縄と戦争」にその鍵があることに気づきはじめる…。戦争は本当に終わっているのだろうか。なぜおとうさんの心の中でだけ戦争は続くのか?今、日本人が本当に知らなくてはならないことがここにある。

沖縄から疎開してきた人々のお話
小6の少女ふうちゃんが
家族や友人、同じように疎開してきた人々
学校の先生との対話を通して

「生」と「死」に真剣に向き合っていく物語

特に自分のような平成生まれは
日本の苦しい時代を知らない
平和で豊かな日本しか知らない

今の自分達の生活というのが
多くの人の方たちの努力、犠牲、死の上に
成り立っているものだと
しみじみと感じることができる作品

「死」や「戦争」と向き合う怖さと
必死に戦うふうちゃんにはひたすら心を打たれるし

伝えていいものか
と悩みながらふうちゃんに接する大人達
の苦悩や葛藤を思うと
とても苦しい気持ちになる

大切なことから目を背けずに
生きていくということの大切さを
まざまざと体験できる本当に素晴らしい小説だった

2つほど本文引用

私をかわいがってくれる人を、わたしがよく知らないとしたら、わたしはただ、人に甘えているだけの人間になります。わたしをかわいがってくれる人は、わたしをかわいがってくれる分だけ、つらいめにあってきたのだということが、このごろのわたしには、なんとなくわかるのです。だから、わたしはいっそう、みんなのことを知りたいのです。知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、わたしはなりたくありません。

いい人ほど勝手な人間になれないから、辛くて苦しいのや、人間が動物と違うところは、他人の痛みを、自分の痛みのように感じてしまうところなんや。ひょっとすれば、いい人というのは、自分のほかに、どれだけ、自分以外の人間が住んでいるかということで決まるのやないやろか

チャートはこんな感じ

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メッセージ性が強く
読了感はずっしりより
実際に人が死ぬような切なさはない
人として黒い部分はでてこないから
人物像は理想より
てかんじ

まとめ

  • 児童文学作家の灰谷健次郎さんの作品

  • 他の代表作は『兎の眼』

  • 主人公の小学生ふうちゃんを通して「戦争の過去」「死」向き合う機会を提供してくれる本

普段無意識に目をそらしているようなことを
目の前につきつけてくるこの『太陽の子』のような
作品は大切にしないとけないですね

少し苦しくもなりますが
楽しいだけではなく
考えさせられる機会を与えてくれることも
作品に触れるメリットの1つですね