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【書評】『イシューからはじめよ』安宅和人|ロジカルシンキングの基礎

価値の高い成果を生み出すための、知的生産術とはなんなのか?

知的生産術(ロジカルシンキング)に関する本は書店に行くとよくあります。

そのロジカルシンキングの基礎が書いてあり、2010年から10年に渡って読まれ続けている本が

『イシューからはじめよ』安宅和人

 

ロジカル(論理)と聞くと「原因と結果がうまく結びついているか?」という因果関係に目が行きがちです。

生産性の高い仕事というと、「優れたクリエイティビティを生かして、画期的な解決策を提示する」みたいなイメージをするかもしれません。

しかし、ロジカルとは必ずしも因果関係が大切なわけではないですし、生産性を高める方法として、画期性の前に考えねばならない大前提があります。

それが今回の本でいうところの「イシュー」(課題)です。

まず解くべき課題を明確にすることが大切。その上で解の質を高めていく。それが本書の趣旨です。

課題を明確にし、その上で、解の質を高めていく。そして最終的に誰かに伝える。その一連の過程の土台となる考え方がこの本で学べます。

 

こんな方におすすめ

ロジカルシンキングってなんなのか知りたい

時間をかけても、なかなか成果に結びつかない

 

仕事の成果=イシュー度×解の質

とぅーん
とぅーん
バリュー(価値)のある仕事とはなんですか
イシューからはじめよ
イシューからはじめよ

 僕の理解では、「バリューの本質」は2つの軸から成り立っている。
ひとつめが、「イシュー度」であり2つめが、「解の質」だ。
(中略)
「イシュー度」とは「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、そして「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」になる。

仕事の価値=イシュー度×解の質

 

仕事の価値を考える時には、「イシュー度」と「解の質」のどちらが欠けてもいけません。

ついつい「解の質」のほうに目がいってしまいがちですが、「イシュー度」の高い、解くべき課題、の明確化こそが大切なのです。

これが、この本のタイトルである『イシューからはじめよ』に込められたメインメッセージです。

 

イシュー度と、解の質は、どちらも大切ですがが、まず高めるべきはイシュー度です。それを表したのが下記の図です。(本書内で掲載されている図を作成しました)

解の質を高めようとするとどうしても時間がかかってしまいます。また、一度解の質を高めてから、問くべき課題が間違っていたといって、課題を変更することはできません。

課題を変えたからには、最初からやり直すしかないのです。そうすると、時間がかかってしまいます。

一方で、イシューの見極めは必ずしも作業量が多いわけではないので、時間がかかるものではありません。

だからこそ、まずはイシューを見極めるのです。

「仕事のバリュー」=「解の質」×「イシュー度」

まず高めるべきは「イシュー度」

良いイシューの見極め方

良いイシューを見極めることが大切だとして、では、そもそも良いイシューとは何なのでしょうか?

良いイシューには3つの条件があるといいます。

①本質的な選択肢である

②深い仮説がある

③答えを出せる

 

1つずつ見ていきましょう。

<①本質的な選択肢である>

本質的な選択肢とは、数ある課題の中でも「答えをだしたときに、その影響力が大きいもの」ということです。

いろいろ解決すべき課題があるとして、それらの課題の原因を深く分析し、一番結果に影響がある問題点。

それこそが本質的な課題です。

 

<②深い仮説がある>

次に、「深い仮説がある」ということが、良いイシューの条件です。

深い仮説を作るための1つ目の方法が「常識を否定すること」で、2つ目が「新しい構造で説明すること」です。

「常識を否定する」はわかりやすいですね。

地動説などが良い例です。

常識的に考えれば、地球が動いているなんていうのはありえない。そういう状況下で、その常識を否定して、地球が動いているという仮説をたてて、研究を進めた結果、地動説というものが正しいことが証明されました。

「新しい構造で説明する」は少し分かりづらいですが、今まで別物でなんの関係性もないと考えられていたものの、関係性や共通性を見出すということです。

イノベーションは、0から1を生み出すのではなく、新しい組み合わせを発見することだ、といわれることもあります。

他の人が気づいていない関係性や共通性を見出しすことで、深い仮説を構築することができます。

 

<③答えを出せる>

今ある技術や方法で答えを出せるかどうか?、ということも良いイシューの条件です。

答えを出すべき問題に対して、仮説を立てたとしても、その仮説を検証できなければどうしようもありません。

 

これら3点を満たす、良いイシューは、全体の1%しかないと著者は言います。

序章で述べたとおり、気になる問題が100あったとしても、「今、本当に答えを出すべき問題」は2、3しかない。さらに、そのなかで「今の段階で答えを出す手段がある問題」はさあらにその半数程度だ。つまり「今、本当に答えを出すべき問題であり、かつ答えを出せる問題=イシュー」は、僕らが問題だと思う対象全体の1%ほどに過ぎない。

 

今、答えを出すべきかどうか、そして、答えが出せるかどうか、を検討することで、全体の1%の良いイシューを見極めるのです。

良いイシューは「本質的な選択肢であり」「深い仮説があり」「答えを出せる」

解の質の上げ方

イシューを見極めたら次に解の質をあげます。

そのステップとしては

1.イシューを分解する
2.ストーリーラインを組み立てる
3.絵コンテを作る

1.イシューを分解する

イシューそのままでは大きい場合は、それをより細かく分析していきます。

注意するのは、もれなくだぶりなくなるように分割をすることです。

イシューを分解して、サブイシューにしたら、それぞれに対してまた仮説をたてます。

 

2.ストーリーラインを組み立てる

サブイシューができ、それぞれに対しての仮説ができたら、次はそれらを1つのストーリーとしてまとめます。

 イシューを分解し、そのサブイシューに個々の仮説が見えれば、自分が最終的に何を言わんとするのかが明確になる。ここまでくればあと一歩だ。
イシュー分析の次のステップは、分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てることだ。分解したイシューの構造と、それぞれに対する仮説的な立場を踏まえ、最終的に言いたいことをしっかり伝えるために、どのような順番でサブイシューを並べるのかを考える。

 

これは、プレゼンテーションや文章で誰かに伝えるためにも大切なのはもちろんですが、それぞれのサブイシューが、メインのイシューに対してもっている役割を明確にするためにも役立ちます。

最終的なゴールを思い描いた上で、そこに必要なパーツとしてサブイシューを埋めていくのがストーリーライン作りです。

ストーリーラインはもちろん固定的なものではありません。検討がすすみ、サブイシューに答えが出るたびに書き換えて、磨いていくものです。

軌道修正もしながら、できる限り早くゴールにたどり着くために、ストーリーラインづくりは欠かせません。

3.絵コンテづくり

絵コンテづくりは、図表づくりなど、ビジュアル的に人に伝えるための方法の部分です。

図表で伝える内容は、仮説に対する分析結果です。では、そもそも分析とはなんでしょうか?

「分析とは何か」
僕の答えは「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同士を比べ、その違いを見ることだ。

 

分析とは比較なのです。

比較はもう少し細かく分かれます。

1.比較(量の比較)
2.構成(全体と部分の比較)
3.変化(時間軸上での比較)

仮説を証明するためにはどの分析が有効なのか、そして、その分析結果を説明するためには、どんな軸を用いて、どんな形式の図表を用いるか。

それこそが、絵コンテづくりの本質です。

解の質を高めるためには「イシューを分解し」「ストーリーラインを作り」「絵コンテを作る」

『イシューからはじめよ』のまとめ

  • 仕事の価値はイシュー度×解の質で決まる
  • イシュー度をあげるには、「本質的な選択肢であるか」「深い仮説がるか」「答えが出せるか」が重要
  • 解の質をあげるには「イシューを分解し」「ストーリーラインを作り」「絵コンテを作る」

課題を設定し、仮説を作り、検証し、伝える。

この一連の過程の基礎を紹介しているのが本書です。

課題解決能力、ロジカルシンキングに興味がある方が、最初に読む本としてもおすすめの本です。

是非、手にとってみてはいかがでしょうか。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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