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青色LED発明物語、ノーベル物理学賞赤崎勇の生涯|『青い光に魅せられて』


2014年

日本人の赤﨑勇教授、天野浩教授、中村修二教授の
3名がノーベル物理学賞を受賞した

業績は

青色LEDの発明

この青色LEDができたことによって

発明当時、既にできていた赤と緑のLEDとあわせて、光の3原色が揃い
白色光を作り出すことができるようになった

また、Blue-rayディスクにも使われている
青い光が使えるようになったことで
記録密度をあげることができるようになった(理由は後述)

 

ただ、この青色LEDの作成の意義は
単にこれら製品への応用にはとどまらない

物理学の研究分野をざっくりとわけると
宇宙・素粒子・物性物理となる

ノーベル物理学賞は
宇宙・素粒子と、物性物理で交互に受賞している

2014年 青色LED(物性)
2015年 ニュートリノの質量(宇宙)
2016年 トポロジカル相転移(物性)
2017年 重力波(宇宙)
2018年 光ピンセットとパルスレーザー(物性)
2019年 太陽系外惑星の発見(宇宙)

物性物理学というのは「物」の「性」質を調べる研究領域
その物性物理学において大切なのが「物」を作る過程

高品質の「物」をつくる必要がある
この「物」というのが金属や半導体などの結晶

きれいな結晶をつくれるかどうかというのが物性物理の核心である

赤﨑教授らは、実現困難と言われる青色LEDの作成の過程で
結晶成長技術の新しい世界を開いた

 

とぅーん
とぅーん
こんなかんじで語っている自分は
学部4年生と修士の2年間、物性物理の研究に関わっていて
結晶成長をずっとやってました!

 

その青色LEDのの発明物語を書いているのが

 

今回はこの本と、自分の学生時代の知識を基に
青色LEDの意義や、赤﨑さんの発明発見物語を
ざっくりと紹介

この記事ではこんなことがわかる

そもそもLEDって何か?

青い光のなにがすごいのか?

赤﨑氏らは、どうやって青色LEDの発明に至ったのか?どんな困難があったのか?

そもそもLEDとは何なのか?

LED = Light Emitting diode = 発光ダイオード

ダイオードってのは、一方向にしか電気を流さない物体のこと

その1方向にしか電気を流さない物体を作る方法の1つが半導体の利用である
半導体とは導体と絶縁体の間くらいの電気を流す物体

これだけ聞くと、ただの中途半端物体のようなのだが
この中途半端さのおかげで

電流を1方向に流すダイオードができ
電流を、流す・流さないの切り替えができる(スイッチとしての機能)

そしてこれらの機能をもつことで
パソコンに応用された

パソコンの0と1を使ってすべての処理をしているというのは
この電流のon/offを使って、0と1として処理しているという意味になる

金属と言っても鉄や金、銀、銅など色々あるように
半導体にも色々ある

パソコンで主に使われているのはシリコン
アメリカのシリコンバレーの名前はこのシリコンから来ている

IT企業とICチップ、そしてその材料であるSiは切っても来れない関係だ

 

さて、このようにパソコンが行う0と1の計算で使われるだけではなく
今回のメインテーマであるLEDにも使われているのが半導体

この発光原理が白熱電球は蛍光灯とは違う

まず白熱電灯は、フィラメントに電流を流して発熱させて光を出している
発熱を伴うので、消費電力も大きい

蛍光灯は、それよりもはるかに低消費電力
ただ、水銀を使っているという問題がある

そしてLEDは水銀も使っていない上に
蛍光灯以上に低消費電力!!

ちょっと原理まで話すと長くなってしまうので省略
こちらで紹介されていたので、詳しく知りたい方はどうぞ
>> 発光の仕組み、白熱電球・蛍光灯・LEDは何故光るのか?人が作った技術の光

 

電気→光 がLEDであるのに対して
光→電気 が太陽光電池

両者は逆のことをやっているだけで原理としては同じ

とぅーん
とぅーん
めちゃざっくりですが、半導体、LEDの概要が掴んでもらえればOKです!

細かいことを気にしすぎず、大枠で捉えると物理も楽しくなりますね

そして、さらに「なぜ?」という疑問が浮かんだのならば、どんどん調べてみましょう

LEDというのは半導体を使っている
半導体はコンピュータの計算を支えている
コンピュータだけでなく、発光素子としても半導体は使える
LEDは低消費電力で、太陽光電池も同じ仕組み

青色LEDの応用

冒頭でもいったように青色LEDが作成されたことで
光の3原色が揃い、白色光が作れるようになった

こっちもすごいのだが、人に話して
「そうなんだ!」て思ってもらえそうなのは
Blue-rayへの応用

光の世界は非常に面白い
光がいかに物理の研究を促進してきたかは下記記事で語らせてもらった
>> 光は物理の宝箱

結論から言うと
「青い光は振動数が多く、細かい情報を読み取れる
 →青い光で読み書きをしたBlue-rayは情報密度が高い」

 

ここで厄介なキーワードが「波長」

ということでここをもう少し詳しく

光とひとえにいっても色々なものがある
電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線

これらはすべて光といえる
(正確に言うと電磁波かもしれないが、すべて光速で動いている
その中で、人間が知覚できるものが可視光線(=光))

電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線
これらすべて光速で進む波である

波というのは振動しているもので
1秒間に何回振動するかというのが振動数(周波数)
Hz(ヘルツ)という単位で表される

電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線
これでいうと左ほど振動数が小さい
つまりゆっくりしたゆれる波

右ほど振動数が大きい
激しく揺れる波

激しく揺れる波ほどエネルギーが大きく
人体に有害になる
紫外線や放射線がまさにそれだ

また、振動数が大きいと細かく揺れているので
ものを細かくみることができる
(ちょっとここは感覚的に「たしかにそうかもしれない」とおもってほしいところ)

 

可視光線を振動数順に並べると
赤橙黄緑青藍紫(せきとうおうりょくせいらんし)

光の三原色
赤、緑、青でいうと青が一番右にあることがわかる

そんな振動数の大きい、青い光でデータの読み書きをすることで
従来のDVDの5倍の記録密度を実現したのがBlue-rayである

 

光は振動数の違うだけで色々な性質をもつもの
その一端を青色LEDから感じることができる

電波、赤外線、可視光線、紫外線、放射線はすべて光の速度で動く波で、違いは振動数だけ

可視光線の中でも、振動数が大きい青を使ったことで、記録密度を向上させたのがBlue-ray

赤﨑勇と青色LEDの戦い

青色LEDの世界の話しに随分時間がかかってしまった。。。

最後に赤﨑教授と青色LEDの戦いと
その研究意義について、冒頭で紹介した本の引用をしつつ紹介させていただく

 

赤﨑教授は1929年生まれ
ということで、戦争を経験している

戦時中の辛さや、それでも尽きなかった好奇心などについて書かれている
そしてその後、大学、企業へと進んでいく

敗戦後の日本で、懸命に生きた人の経験や言葉から学べるものはとても多い

 

その中でも、大学に入ったときに、助手の方から言われた一言

「大学というところは、何かを教わるところではなく、将来、何かの問題にぶつかったときに、それをどうやって解決したらいいかということを自分でつかみ取るところなんだよ。大学はその手伝いをするだけだ」

実に本質をとらえた言葉

自分も含め、大学で何を学んだでしょうか?
改めて問い直したくなる一文

 

さて、いよいよ青色LEDの話にはいる

あきらめない研究者

そもそもなぜ、赤﨑教授は青色LEDをつくりあげることができたのか
これはもはやおなじみな感じもするが結局は諦めなかったということ

海外でもPersistent Reseacherと紹介されるほど

たとえ最後の一人になったとしても、窒化ガリウムの研究をやめようとは全く思いませんでした。なぜなら、青色発光に魅せられ、窒化ガリウムの可能性を信じて疑うことがなかったからです。

 

もちろんこの言葉が言えるのは諦めずに続けた上で、成功した人だけだし
諦めずに続けたけどうまく行かなかった人ってのもいるだろう

歴史に名が残るのはいつだって、成功者だ

諦めなかったからといって成功するかはわからない
ただ、これだけは間違いない事実

成功した人は諦めずに続けていた人である

 

窒化ガリウムというのは青色LEDで使っている半導体の材料名
世界中の研究者が窒化ガリウムはダメだと考え

他の物質をやる、あるいは、青色LEDを諦める中
窒化ガリウムを信じ、研究し続けたことで、青色LEDが実現した

 

青色LEDをの作成には2つの関門が会った
1つがきれいな単結晶成長

もう1つがp型の作成

単結晶成長の技術を切り開いた

青色LEDを作るにあたって
使える物質の見当はついていた

あだ、問題はそれをいかに高品質に作るか
この品質こそが重要なのだ

そしてなににおいても質をあげるってのは難しい
時間をかければあがるとも限らない

とぅーん
とぅーん
ほんと大変なんですよ、結晶成長。。。

うまく行かなくて当たり前、根性勝負の面も大きいんです

自分なんか、お札買ってきて、装置に貼ってましたからね笑

 

青色LEDのために、結晶の品質は必要だとはみな考えていたが
最重要だとは考えていない人もいた中
赤﨑教授はとにかく結晶の質にこだわって試行錯誤を繰り返した

 

その最中で出会ったのが当時学生だった天野教授

学生天野君はひたすら実験を繰り返した
それでもどうやってもうまくいかない

失敗しては原因を考え
新しい方法を試し手を繰り返す

そんな、ある日、
装置の調子が悪かったせいで
いつもより温度が低い状態で結晶成長を行うことになっていた

これが、決め手!
これできれいな結晶ができた

狙っていたわけではない
偶然といえば偶然だ
ただし、1回ぽっとやってみて当たりました!という偶然とはわけが違う
四六時中装置を動かしたからこそ、装置も根負けし
最適な条件になってしまったのだ

 低温バッファ層技術は、窒化ガリウム単結晶の高品質化を決定づけました。この低温バッファ層技術の開発が、高性能発光ダイオード開発における第一のブレークスルーでした。

 

言葉は知らなくてもよいが
「低温バッファ層技術」
として、一部の結晶を高品質にするときに欠かせない技術となっている

自分が大学院にいたときも
同期が当たり前のように使っていた

この技術こそ
赤﨑教授らが生み出したもの

 

次の課題はp型の作成
半導体では電気伝導を担うものを
プラスの電荷にしたり、マイナスの電荷にしたりできる

プラスの電荷なら(positive)がp型で
マイナスの電荷(negative)がn型の半導体という

このp型作成が無理だとLEDはできない
そして、窒化ガリウムではこれができないというのが通説だった

しかし、結晶品質をきれいにしてはじめて観測することができた現象をヒントにして
p型の作成にも成功する

p型ができないという致命的な問題を抱えているといわれていながらも
そんなことはおかまいなしに
まず、徹底的に結晶の品質にこだわったからこそ

結果的にp型を作ることができた

最後はこんな言葉でしめくくる

「何かを学ぶには、自ら化現してみる以上にいい方法はない」(中略)
これはまさに、研究者人生を通じて最も実感できる言葉です。
なぜ経験が大事かといえば、経験を積むことによって「勘」が芽生えることがあるからです。

たとえ誰に男と言われようと、諦めかったからこそ青色LEDでができた

その過程で生まれた技術は、今の物理の発展を支えている

まとめ

  • LEDは、半導体でできている
  • 半導体はPCや太陽光電池にも使われている
  • LEDは白熱灯とも傾向とも違う原理で発光する
  • 光は振動数の違いで性質が変わる
  • 青色LEDは諦めない研究者がつくった
  • 青色LEDでの技術が、物性物理の技術を支えてる

どうでしょう?なにか明日にでも
友人に披露したい知識がみつかりましたか?

別に数式がなくても
原理を事細かにわからなくても
物理の世界は楽しめますからね!

 

ここまで読んでいただき有りがおつございました

 

より詳しく知りたいという方はこちらの記事で
LEDの発光原理なども図解でわかりやすく紹介されていました
>> 【2014年 ノーベル物理学賞】「青」に捧げた人生~なぜ30年もかかったのか?

 

物理で一番最初に習う力学の世界を語った記事
>> 忌み嫌われる物理に光を!近代科学のはじまりの物語