小説

【感想】『線は、僕を描く』砥上祐將|水墨画の世界に触れ、心の世界に触れる

水墨画

と言われてなにを思い浮かべるだろうか?

自分ならば雪舟、と思い浮かぶだけで実際に絵すら思い浮かぶか怪しいくらい

そんな水墨画の世界を
本物の水墨画家さんが描いた小説が

『線は、僕を描く』砥上祐將

 

この作品はメフィスト賞も受賞している
メフィスト賞作品には面白いものが多い!

砥上さんのインタビュー記事 >> 水墨画の魅力あふれる成長小説 最新メフィスト賞・砥上裕將さん「線は、僕を描く」|好書好日

直近4年中、3回も本屋大賞を的中させている
ブランチBOOK大賞も受賞した

 

この作品の魅力

水墨画の世界を知れる

絵が見えてきそうな緻密な丁寧な描写

主人公や他の登場人物が一歩踏み出していく姿似勇気をもらえる

言葉ではなく、絵だからこそ伝えられるものがあるということを感じられる

 

とぅーん
とぅーん
本文の引用もしながら魅力を紹介!

※ネタバレはないです

 

『線は、僕を描く』のあらすじと冒頭文

あらすじ↓

小説の向こうに絵が見える!

美しさに涙あふれる読書体験両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。描くのは「命」。はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。

絶賛の声、続々!!

 

講談社さんがだしている動画もいい

 

>> 線は、僕を描く|講談社公式サイト

 

物語は主人公の青山霜介がアルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会うところからはじまる

冒頭文↓

 僕らの口はポカンと開いていた。
巨大な総合展示場の地下駐車場に集められた僕らは、作業を監督する西濵さんという男性の話を聞きながら、思考停止寸前だった。
簡単な飾り付けのアルバイトだと聞いていたのに、まるで話が違う。説明を受けている限り、ガッチガチの肉体労働で、とても集められた数人でできる仕事じゃない。

 

友人の古前君に誘われていったアルバイト
ここで、青山霜介は水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い
水墨画の世界にはいっていくこととなる

 

絵画を表現する緻密な文章表現

水墨画

という「絵」を表現しているので
その表現が非常に繊細

 小さなきらめきや広がりが積み重なり、一枚の風景が出来上がったとき、最初に見たときは漠然と美しいとしか感じられなかった絵が、二枚目になると懐かしさや静けさやその場所の温度や季節までも感じさせるような気がした。細かい粒子によって出来上がった湖面の反射は、夏の光を思わせた。薄墨で描かれた線のかすれが、ごく繊細な場所まで見て取れるので、眩しさや、色合いまでも思わせ、波打つ様子は静けさまでも感じさせた。

 

主人公青山は非常に優れた目をもっている

湖山先生が絵を描くときの一挙手一投足を
完璧なまでに目に焼き付ける

そして、できた絵からも感じ取るものが非常に多い

言葉の力はすごい
これは事実

自分は、沢山の本を読んできて
言葉の力がいかにすごいのかということをいつも思い知らされる

ただ、一方で言葉で伝えられないことがほとんど

これもまた事実

 

文で表現された絵を見て、その絵から何かを感じ取る
文で表現された情景を見て、その情景から何かを感じ取る

これこそ小説の大きな魅力

水墨画は線の絵画

水墨画と他の絵をわけているものはなんなのだろう?

ぱっと浮かぶのは、色が一色であること

 

この作品の中では、それ以外に
上から重ねて塗るような描き直しができないことなどもあげているが

線が、特に大切だという
その気持ちはタイトルの『線は、僕を描く』にも反映されている

線の性質が絵の良否を決めることが多いということです。水墨画はほとんどの場合、瞬間的に表現される絵画です。その表現を支えているのは線です。そして線を支えているのは、絵師の身体です。水墨画にはほかの絵画よりも少しだけ多くアスリート的な要素が必要です。

 

この作品の中で何度も描かれる絵画に
「春蘭」がある

冒頭の動画でも紹介されているし
単行本の最初のページにも描かれている

これを見るとたしかに
線で構成された絵なのかもしれない、と感じられる

どうして線なのか?
というとこの上の引用だけではなかなかわからないだろうが
そこらへんはぜひ作品の中でお楽しみあれ!

自分の心の内側を見ろ

「自分の心の内側を見ろ」
と、湖山先生は言っていたのだ。それを外の世界へと、外の現象へと、外の宇宙へと繋ぐ術が、水墨画なのだ。

 

この本の主人公の青山霜介は
小さい頃に両親をなくし、かなりふさぎ込んだ生活をしてきた

そんな彼の心の葛藤も、この小説のテーマの1つ

芸術に対面するということは
自分の心に向かい合うことに通じている

たとえ同じものを見たとしても、聞いたとしても
人それぞれ違って見えているし

それを表現する方法も人それぞれ

 

青山君の場合は、それが水墨画だった

水墨画を通して少しずつ見えてくる自分の心の内側
断ち切っていた外とのつながりを
水墨画によってつないでいく

 

他の水墨画に取り組む人たちも
それぞれの思いを水墨画にのっけていく

まとめ

水墨画の世界という、あまり馴染みはない世界について
リアリティをもって知ることができ

緻密な描写や思いに触れることができ

希望を感じられる作品です

 

ここまで読んでいただきありがとうございました

 

描写力や、芸術への思いなどは
恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』に通じるものを感じます

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