小説

【感想】『海賊とよばれた男』百田尚樹|奮い立つ男、古き良き日本!

 

2013年 第13回 本屋大賞大賞受賞作

『海賊とよばれた男』百田尚樹

 

石油に魅せられた男、国岡鐵造と、その男に魅せられた仲間たちの物語

戦争前後の苦しい日本の中で、世界と、ひいては国内の競合と

戦い続けた熱い男達の姿に心打たれる

どんなに辛い世の中であろうと

「社員は家族、誰一人首にはしない、全ては日本のために」

の精神で行動した国岡鐡造

熱い青春小説としても、戦争前後の日本を知る時代小説としても、経営者としての生き様を知るノンフィクションのビジネス書としても楽しめる最高の1冊

日本らしい終身雇用を見きった、戦争を知らない世代こそ読んでほしい!

こんな方におすすめ

歴史を感じられる時代小説好き

熱い物語が好き

若い世代

本屋大賞好き

 

冒頭分

 青い空がどこまでも続いていた。
湧き起こる白い入道雲のはるか上には、真夏の太陽が燃えていた。
見上げる国岡鐡造の額に汗が流れ、かけていた眼鏡がずれた。シャツにもべっとりと汗が滲んでいたが、暑さは微塵も感じなかった。
小学校の広い校庭に集まった人々の多くは、茫然と立ち尽くし、地面にひれ伏し、なかにはすすり泣く者もいた。
鐵造は度の強い眼鏡をかけ直すと、しっかりと両足を踏みしめ、今しがたラジオで聞いたことを頭に反芻した。
日本は戦争に負けたー

 

百田尚樹

2006年 太平洋戦争の神風特攻隊を題材とした作品

『永遠の0』でデビュー

映画化、ドラマ化、漫画家された大ヒット作品となった
この本についてもたくさん書きたくなってしまうが、今回はこれだけにしておく

ちなみに名前の読み方は”ももた”ではなく”ひゃくた”だ

その後

『ボックス!』で2009年
『錨を上げよ』で2011年
に本屋大賞のノミネートされ

本作『海賊とよばれた男』で2013年
悲願の大賞受賞となった

盗作疑惑とか政治に関する過激な発言など
ちょっとマイナスなことで話題になってしまう点がたまに傷ではある

そしてそれも原因なのか
2019年6月に自身15作目の『夏の騎士』を最後に
引退すると宣言

ただ、今までも何度か引退宣言をしているということでその真偽は不明

 

作家さんなんだしとがったところがあったって良いとおもう
だからこそ百田さんにしか生み出せない作品がある

素晴らしい作品をこれからも世の中に残してほしい

海賊とよばれた男

敗戦の夏、異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、なにもかも失い、残ったのは借金のみ。そのうえ石油会社大手から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも馘首せず、旧海軍の残油集めなどで糊口をしのぎながら、たくましく再生していく。20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とはいったい何者か―実在の人物をモデルにした本格歴史経済小説  (「BOOK」データベース)

 

フィクションよりもフィクションなノンフィクション

主人公の国岡はまさに理想のリーダーだ

誰しもがついていきたいと思わずにはいられない
明確なビジョンをもち、それを確実に行動にうつしていく
どんどん周りを巻き込んでいく

国岡を支える人たちも魅力的な人たちばかりだ
天才のもとにはいつだって最高の仲間がいる

ということで現実にいた人であるが人物は理想的MAX

 

基本的に読了感は爽快だ
ただ、単に爽快というには惜しいメッセージがずっしりとやってくる

 

ということでチャートはこんなかんじ

石油に魅せられた男

この本もモデルとなっているのは

貝のマークのガソリンスタンドで有名な出光興産の創業者

 

無謀と言われた日本の真珠湾攻撃もABCD包囲網によって石油が枯渇しそうになったからだという話もある

戦争後も石油を握るアメリカによって支配されそうになる日本
数々の国内企業も海外大手石油会社、通称セブンシスターズに取り込まれていく中で

唯一、国岡だけは立ち向かった
立ちはだかる数々の困難を乗り切ったのは

国岡の圧倒的な情熱、そして国岡率いる国岡商店の団結力

もはや国岡商店の挑戦はいつだって世界との決闘
いつもハラハラワクワクとさせる

 

エネルギーの主力が石炭から石油に変わっていく世界で
石油をおさえなければ日本が支配されてしまう
という焦り
石油が世界を変える力をもっている!
という強い思い

これらを信じ
人生のすべてを支えた国岡の人生を眺めることで、石油を通して戦争前後の歴史をひも解く

とぅーん
とぅーん
学生のときの歴史の授業、全然覚えられなかった
そんな自分でも歴史を学べる点も時代小説の魅力

古き良き日本の企業のあり方

戦後の荒廃しきった日本

ろくに仕事がない状態になってなお、国岡は

誰一人として首にはしなかった
社員は家族だ!
という信念を決して曲げなかった
戦争時代も兵役にでている社員に対して給与を払い続けた

 

正直、自分も終身雇用はもう続かないと思っている
そしてそれを良いことだと思っている
終身雇用は人を怠けさせてしまうと思っているから

「ただ、終身雇用なんて古き悪しき風習」などと簡単に片付けてはいけない

そもそも今の豊かな日本があるのは、この戦後の厳しい日本を、色々なことを我慢して、必死に生き、必死に発展させてきてくれた世代がいるからこそあるのだ

やっぱりこれは決して忘れてはいけないことだと思う
だからといって親世代、祖父母世代の教えにすべて従わないといけない、とは思わない

今の日本を作ってくれた全ての人々に感謝をし敬意を払い
その世の中を築き上げたシステムを十分に理解した上で

築き上げてくれたものの恩恵をうけて
さらなる素晴らしい世界を築き上げていくことがこれからの世代のミッションだ!

 

とぅーん
とぅーん
過去を否定するのではなく、取り込んだ上で成長してく
そうやってよりよい世界を目指したい!

 

まとめ

なんだか後半やけに「夢抱く熱い青年」みたいになってしましましたが

こう感じさせるだけの力をもっているのがこの作品です

 

歴史を知り、その時代を生きた人々の思いを知る
熱すぎる挑戦ストーリー

 

会えて良かった、と思える小説

是非、一度手にとって見てはいかがでしょうか?

 

ここまで読んで頂きありがとうございました

 

 

 

他の本屋大賞作品おすすめ本はこちら

【2019年版】完全主観、本屋大賞大賞作品おすすめベスト7 2004年から始まり、年々影響力を強めている本屋大賞 2019年現在、16回行われている 今回はその大賞受賞作品、全...