2015年の 第12回本屋大賞は
上橋菜穂子さんの『鹿の王』
冒頭文
また、木洩れ陽の中にいる夢を見た。
目を上げれば、遠く、雪をまとった山脈が見える。故郷の谷川の、木洩れ陽にぬくもった岩の上に腰をおろして、釣り糸をたれている夢だった。
なぜだろう。そんな夢を、汚泥にまみれた地の底で、毎夜、繰り返し見る。
あの川は美しかった。木々の枝がゆっくりとはりだし、秋になれば、赤や黄に色を変えた葉が、水面を錦のように彩った。
老いて力尽き、水面に舞い降りた枯れ葉は、澄んだ水の底に小さな影を落としながらいづこともなく流れていく。
『サラバ!』西加奈子
『ハケンアニメ!』辻村深月
の!つき強力な小説2冊をおさえて
堂々の本屋大賞
たしかに読み応え抜群の
見事な作品だった
ファンタジーが好き
壮大な雰囲気を味わいたい
余韻が残る作品が好き
やけにリアリティを感じるファンタジー
すっとその世界に引き込まれる描写は秀逸
壮大な雰囲気の世界の中で生きる人々
敢えてファンタジーの世界で
絆、生命、運命について問う
『鹿の王』の作者、上橋菜穂子さん
1989年『精霊の木』でデビュー
代表作としては
「守り人」シリーズ
『獣の奏者』
どちらもNHKでアニメ化している
どっちも読んではない
本作『鹿の王』は
2019年3月27日に
続編の『鹿の王 水底の橋』が発売 !
アニメ映画化プロジェクトも始動中
『鹿の王』の感想
あらすじはこちら
(『鹿の王』上橋菜穂子(うえはし なほこ)| 角川書店 | KADOKAWA)
ジャンルとしてはファンタジー
あらすじの下にかいてあるように
医療サスペンスでもあり
冒険小説でもある
そしてテーマは絆でもあり
生命でもあり
運命でもある
ファンタジーならではの言葉の設定と
登場人物の多さに最初は少し苦戦する人もいるだろうが
それがわかってくる頃に物語が
大きく動き出す
緻密に描かれる壮大な世界の物語
ワクワク感をもって読み進められるが
終わってみて思うのは
病とは何なのか
生物はなぜ生まれ、なぜ死ぬのか
運命とどう向き合うのか
そんなことであった
支配する者と支配される者
移住民には移住民の事情がある。故郷を離れて移住させられてきた苦悩も、この地で根をおろすために流した汗も、この地で得た幸せもある。
そういうすべてを考えず、彼らをただ、神に許されぬ者と思う、その心の底に何があるのか、彼らは見ようとしていない
(神というのは便利な理屈だ)
移民の受け入れなどは今世界でも議論されている問題の1つだ
移民に限らず異分子のように扱われてしまう人々もいる
そんな彼らの苦しみや、その苦しみを乗り越えて勝ち取った幸せ
簡単に踏みにじっていいものであるはずがない
一部きりとりではとても表現しきれないが
支配者の都合で振り回される小国の民達が怒り抗うシーンがある
少し厳しい状況でもこれは運命だから仕方ないと受け入れてきた人々
そうやって色々飲み込んで受け入れなきゃいけないんだろうか?
運命ってなんなのだろうか?
生命の意味とは
私たちはみな、ただひとつの個性なんです。この身体もこの顔も、この心も、一回だけ、この世に現れて、やがて消えていくものなんですよ
人は何のために生きるのか?
という問いをもっと深めて
そもそも生命とは何なのか?
なぜ命には終りがあるのか
そんな根源的な問いに迫るワンシーン
「生命の意味とは」
という問いはこの物語を一貫して貫くテーマである
身体も国も、ひとかたまりの何かであるような気がするが、実はそうではないのだろう。雑多な小さな命が寄り集まり、それぞれの命を生きながら、いつしか渾然一体となって、ひとつの大きな命をつないでいるだけなのだ。
身体も国も
雑多な小さな命の集合体
大きな1つと単純にとらえては見えないことがたくさんある
だからといって細分化していけば1つの根本原因にたどりつくというわけでもない
身体のどこかのほころび、病が全体に悪い影響を与えるように
国内の小さなほころびが大きな病に発展してしまうこともある
多様なものが複雑に絡み合っているという現実
その複雑さ、難しさ、奥深さ
を国内の対立や身体の病を通して描き出す
ずっしりと心に響く
主人公も含め、みな、己のおかれた状況、運命に
悩み、苦しみながらも、強く生きている
ずっしりと、いろいろなことを考えさせられる作品
ストライクゾーンと違うため感想がうまく書けなかったが
かなり気に入っている
繰り返し読んでいきたい作品
『鹿の王』の壮大な世界の冒険へ!
ファンタジーという形で読みやすい世界観の中で
生命や運命について考えさせられる
深い感動を味わえる作品です
文庫4冊とやや長編ですが
だからこそ描ける壮大な物語となっているので
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
ここまで読んで頂きありがとうございました
本屋大賞の大賞作品全16作品についてまとめた記事