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【書評】『お金2.0』佐藤航陽|経済の5つの要素の価値主義の時代

「お金とはなにか?」

「経済とはなにか?」

テクノロジーの発展
そして物質的な豊かさによって
今世の中の「お金」というものの価値が変わりつつある

いったいどんな変化が起こっているのか?

そんな時代の中で
我々はなにを大切にし
どう行動したらいいのか?

それを教えてくれる本が

『お金2.0』佐藤航陽

 

「モノ消費」から「コト消費」
「中央集権」から「分散化」
「大企業の時代」から「個の時代」
営利組織の社会的責任

これら、世の中の変化をあらわすトレンドを理解するには
「お金」とは何か?を理解する必要がある

こんな方におすすめ

「お金」と「経済」とは何か知りたい

世の中の変化、向かう先について知りたい

これからの時代の生き方について考えたい

経済の5つの要素と脳の報酬系

経済とは何か?
これは一概には言いづらいが、本書の定義は

 とりあえず「生産活動をうまく回す仕組み」を「経済システム」と、ここでは呼ぶことにします。
「経済システム」は、大前提として自己発展的に拡大していくような仕組みである必要があります。

 

資本主義とか、通貨がどうとか、株式がどうとか
そういうのは関係ない

 この持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」にはどんな要素があるかを調べていった結果、5つほどの共通点があることに気がつきました。
①インセンティブ、②リアルタイム、③不確実性、④ヒエラルキー、⑤コミュニケーション、の5つです。

 

これら5つの要素を満たせば持続的かつ自動的に発展していく「経済システム」が作れる

「会社」という組織も、「SNS」のようなサービスも、「ゲーム」も
5つの要素を満たせているかどうかによって、発展していくかどうかが決まる

それはなぜか?とういと
この5つの要素が脳の報酬系を刺激するから

とぅーん
とぅーん
脳の報酬系と経済の5つの要素はどうつながってるんだ?

そもそもなんでさっきの要素はカタカナで書かれているんだ?

ちゃんと本書内では日本語版も書いてあるのでそれとともに

 

インセンティブ(報酬が明確である)

脳の報酬系を刺激するには
その名の通り報酬を与えればいい

人間の欲求としては
食欲などの生理的な欲求と
承認欲求のような社会的な欲求がある

これを満たす必要がある

そして次の章でも話すが
生理的な欲求が満たされた今
社会的な欲求の価値が高まっている

時間によって変化する(リアルタイム)
運と実力の両方の要素がある(不確実性)

人間の脳は非常に慣れやすい
同じ刺激に対して同じように反応していては疲れてしまうから

繰り返されるものには慣れやすいからこそ
新しい刺激には強く反応する

だから変化が必要になる
変化こそが脳を刺激し、人を刺激する

 

秩序の可視化(ヒエラルキー)
参加者が交流する場がある(コミュニケーション)

人間は集団で行動する生物

その人間が集団として繁栄するためには
内部での競争が不可欠であるし

他者との関係性の中で、快楽を感じる

集団として発展するのに効率が良いように脳ができてる

 

これから流行りの企業やサービスを見る時
はたまた作っていきたい時
この5つの要素で分析して見ると面白い

持続的かつ自動的には発展し、生産活動をうまく回す経済には
①インセンティブ、②リアルタイム、③不確実性、④ヒエラルキー、⑤コミュニケーションの5つの要素が必要

 

『お金2.0』で考え直す、お金と価値

そもそも「お金」とはなにか?

お金(貨幣)は3つの機能をもつ

  • 価値尺度
  • 交換・流通手段
  • 価値貯蔵手段

つまりお金とは「価値」
数値化して、交換可能で、貯蔵可能なものにしているもの

これが辞書的な定義

 

しかし

今起きていることは、お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということです。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています。

 

企業の資産としても
資金力や設備などの物理的なモノ以上に
「データ」や「人材」価値が高まってきている

GAFAの価値なんてのはほぼ人材とデータだ

 

ここで改めて価値とは何か?と考える必要が出てくる
価値は3つに分類できる

・有用性としての価値

・内面的な価値

・社会的な価値

有用性としての価値

これに関しては改めて言うまでもないだろう
今まで重視されてきた価値であり
数値化しやすい価値

現実世界で役にたつものや
生活必需品に関係する価値

しかし、ものが行き渡って豊かになった世の中では
この価値が下がってきている

ミニマリストなどは物質的豊かさへの魅力が下がっていることを具現化したような例
変わりに価値が上がってきているのが他の2つ

内面的な価値

愛情・共感・興奮・好意・信頼など、実生活に役にたつわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす時に、価値があるという表現を使います。

共感や信頼が大切
という言葉を最近聞くことが増えてきている

SNSによって個人が発信できるようになったことにより
共感や信頼を構築することができるようになり

直結するかは置いておいて
いいねやフォロワー数での数値化もできるようになってきている

共感されるビジョンがあるか?信頼できるかどうか?
これが企業にも個人にも求められ

それらを集めた人は
クラウドファウンディングや
情報発信などで

その価値を金銭に変換することもできるようになってきている

そこらへんより詳しく知りたいという方には
革命のファンファーレ』西野亮廣がおすすめ
>> 【書評】『革命のファンファーレ』西野亮廣|お金と広告の本質を捉えよ!

社会的な価値

個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動も私たちは価値があると表現します。

かつては企業は経済的(金銭的)価値を求め
NPOが社会的価値を求めていた

社会貢献活動をやるのは
営利を求める企業のやることではなかった

少なくともやるメリットが少なかった

 

しかし、いま、企業にとって資金力以上に人材が大切になってきている
そしてミレニアル世代、とか言われるような現代の若者

生まれたときから物質的に満たされてきた若者は
「生きがいややりがい」を求めている

そういった若者を取り込むためには
企業としても社会的価値を追求している姿をみせなければいけない
社会的価値を追求することが企業の「価値」を高めることになる

また、投資家達もESG投資といって

環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)といったものを
重視しているかを判断基準とするようになってきている

社会的価値の追求をすることで
金銭も人材も集められるようになってきている

ここらへん詳しくは
余り有名じゃないけど『BIG PIVOT』A.S.アンドリューがおすすめ!
>> 【書評】『ビッグ・ピボット』A.S.アンドリュー|社会価値と経済価値を共存させる企業のあり方

価値主義

「価値」の媒介手段が増えて
「内面的な価値」「社会的な価値」にも注目が集まった結果生まれてきたのが

価値主義

価値主義とは資本主義と全く違うパラダイムではなく、これまでの資本主義が認識できなかった領域もテクノロジーの力を使ってカバーする、資本主義の発展系と考えてもらった方がわかりやすいと思います。

 

いわゆる資本主義は
有用的な価値にかなりウエイトが置かれていた

「有用的な価値」は数値化しやすく「お金」で媒介されやすいので

「お金」で価値をやり取りする資本主義では
「有用性」という価値だけが注目されていた

 

「価値」の媒介手段も、それぞれの「価値」へのニーズも変わってきている
というのが現代の価値主義

価値には「有用的な価値」「内面的な価値」「社会的な価値」の3つがあり

それらのバランスが変わってきているのが現代

 

『お金2.0』の時代の生き方

「価値主義」で求められる人材の条件として
フェイスブックのザッカーバーグCEOのスピーチが引用されていた

 今日私が話したいのは、「自分の人生の目標(意義)を見つけるだけでは不十分だ」ということです。僕らの世代にとっての課題は、「”誰もが”人生の中で目的(意義)を持てる世界を創り出すこと」なのです。(中略)この社会を前に進めること、それが僕らの世代の課題です。新しい仕事を作るだけじゃなくて、新しい『目的』を創り出さなきゃいけない。

 

とぅーん
とぅーん
さすが成功者は言うことが違いまっせ~

「自分の人生の目的を探す」のその先を見ちゃっている

 

これは著者の言葉だが

この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道だと言えます。(中略)その人でなければいけない、この人だからこそできる、といった独自性がそのまま価値につながりやすいです。

あくまで重要なのは自分自身と向きあった上で、自分の情熱を発見し、自らの価値を大事に育てていくことだと私は思っています。

 

「好きなことで生きていく」
こんなことはずっと前から言われていた

あらゆる自己啓発に書いてある

ただ、いま、それが昔以上に大切であるし
実現しやすくなってきている

「企業」も「社会的価値」の追求がしやすい環境が整った
個人も自分の人生を生きやすい環境が整った

実に良い変化が起きている
この変化にのらない手はない

 

かつて人は生きるために働いた

誰かがやらなければいけない仕事がたくさんあった
そこから生み出された価値が生活水準をあげ
物質的に豊かにした

そしていま、誰かがやらなければいけない仕事は
機械が代わりにやってくれる

 

生活水準をあげるために必要なのは
物質的豊かさの追求ではない

そんな中で個人として人生の中で
「有用的価値」「内面的価値」「社会的価値」
この3つをどう積み重ねていくか?

しっかり向き合いたい

 

そして最後に
人間が労働とお金から解放されるとどうなるか?
これは個人的にも夢見ている世界の一つなので引用させてもらう

人間が労働とお金から解放されると、膨大に時間が空きます。そこではエンターテイメントが主要な産業になり、いかに精神的に充実させるかを追求していくことになるでしょう。ルネサンスのように、人間の創造性は精神的な充足を得るためにフル活用されて、VR/AR/MRなどのテクノロジーの発展とともに現代の私たちが想像もしないような様々な方向に精神は拡張していきます。

 

とぅーん
とぅーん
エンターテイメントは偉大
人の感情に訴える仕事につく人々を心から尊敬している
そしてエンターテイメントをさらに拡張させるテクノロジーもどうなるか楽しみだ!

 

『お金2.0』のまとめ

・持続的かつ自走的に発展する経済システムには、脳の報酬系を刺激する5つの要素が必要

・お金もコモディティ化し「価値の媒介」の唯一の手段ではなくなった

・「有用性」だけでなく「内面的な価値」「社会的な価値」の重要性が高まっている

・「価値主義」では企業も社会的価値を追求しやすく、個人も自分の生き方をしやすい

世界の今をしる時に
避けて通れないのは「お金」や「経済」

その「お金」や「経済」の本質や、今起きている変化
そして「価値主義」という考え方が知れる本です

ぜひ手にとって見てはいかがでしょう

ここまで読んでいただきありがとうございました

 

 

もう少し資本主義的な経済の歴史を知りたい方におすすめの本
機械が人の労働を代わりにやってくれた未来についても言及されています

>> 【書評】『父が娘に語る経済の話。』ヤニス・バルファッキス|歴史も含めて経済について楽しく知る最高の入門書